【加藤淳設計事務所×Ag-工務店】心地いい暮らしのスタンダード。UA値0.25の断熱性能を備えた過不足のない住まい

※本記事は住宅情報WEBマガジン Daily Lives Niigata による取材記事です。

両親から受け継いだ築30年超の実家を建て替え

E邸が立つ新潟市東区の住宅街は、30~40年前に建てられた住宅と最近になって建て替えられた新しい住宅が入り混じるエリア。ちょうど世代交代の時期に入り、新陳代謝が活発に進んでいる。

Eさん夫婦と2人のお子さんが暮らす住まいも、元々は奥様が育った築30年を超える実家だった。結婚後、別な場所に住み始めた両親から借りて10数年程暮らしていたが、修繕が必要な箇所が増えてきたタイミングで建て替えを決めたという。

「元々家が好きで、いつかは家を建てたいと考えていたんです。別な土地を買って新築することも考えていたのですが、両親がこの家を建て替えてもいいということで建て替えを決めました」(奥様)。

奥様は以前からインスタグラムや住宅情報誌で住宅会社の情報収集をしていて、まだ依頼したい会社を絞り込めていない時期には10社程を巡っていた。加藤淳設計事務所は住宅情報誌に掲載されていた「新発田猿橋の家」の記事を見て興味を持ったという。

「その後3社に絞って検討し、最終的に加藤さんの人柄に惹かれて家づくりを依頼することにしました。私たちの話をきちんと聞いてくださり、プロ目線でのアドバイスも頂ける。この方と一緒にやっていけば、いい家が建てられると思いました」と奥様は当時を振り返る。

住宅街で目を引く杉板張りの外観

約40坪の台形の敷地の間口は約8.9m。奥行は短いところで約13.4m、長いところでは約16.4mになる。

この敷地の中で駐車スペースを設け、十分な床面積を確保するために、間口4間(約7.28m)×奥行4.5間(約8.19m)の長方形に納まるように建物が計画され、延床面積30坪のちょうどいい大きさの住まいが完成した。

建物の高さは建て替え前よりも抑えられ、以前は同じくらいの高さだった両隣の家よりも低く控えめな佇まいになっている。また、建物正面の外壁はすべて杉の下見板張りにすることで、素材感を大切にしたカフェのような、山小屋のような優しい表情を見せている。

「杉板張りの家にしたいと思っていたので、杉板張りの実績がある設計事務所さんや工務店さんに絞り込んで検討をしていました。杉板は見た目の雰囲気も経年変化を楽しめるのもいいなあと思っていました」と奥様。

4畳分の広さがあるポーチにはしっかりと軒が架かっており、自転車を雨から守ってくれている。杉板の外壁と調和する木製玄関ドアは軒のおかげで雨掛かりが少なく、築後1年が経過した今も新築時と変わらない美しさを保っていた。

木塀で囲まれたところは土間コンクリートが打たれた台形状のテラス。こちらは3尺(約910mm)の軒が迫り出しており、リビングに入る日差しを程よくコントロールしてくれるという。

玄関にはリビングとつながるかわいい小窓が

玄関ドアを開けるとそこは3畳の空間。やわらかなアールが付いた垂れ壁の中はカーテンで仕切られたシューズクロークになっている。

薄いリネンのカーテン越しにうっすらと中が透けて見えるため、圧迫感を感じさせない。

内部の壁に取り付けられた有孔ボードにはカギやちょっとした小物を、その下のステンレスのバーには傘を掛けられる。

限られた空間を無駄なく使って物を収納できるように、細やかな設計がなされている。

玄関右手にはレトロガラスを使った小窓があり、こちらを開けるとリビングにつながる。

玄関で靴を脱ぐことなくリビングやキッチンにいる家族とコミュニケーションが取れるこの小窓は、ないからといって困るものではないが、あるとちょっと楽しい。そんなゆとりを感じさせる窓だ。

玄関のすぐ先にあるのはホール兼洗面スペース。左手にはサニタリーと浴室、奥は2階へと続く階段、右手はLDK。家の中のあらゆる場所へ向かうための中心となる場所だ。

洗面台はタモの集成材と深さがある病院用シンクを組み合わせた造作洗面台。木製の天板や幕板が空間と調和しており、クラフト感のあるタイルがアクセントになっている。

鏡は奥様が支給したオーダーメイドの木製ミラーキャビネット。無塗装のものを購入し、洗面台と同じ塗装を施すことでなじませている。ミラーキャビネットは枠が目立たないすっきりしたデザインが多いものだが、こちらはあえて木の枠を表現することでやわらかい雰囲気をつくり出しているのが特徴だ。

大きな家具を置かずに暮らせるミニマルな空間

そして引き戸を開けたところがE邸のメインの空間である18畳のLDK。

入って右手側はアールが付いた垂れ壁が特徴的な籠もりスペースのあるリビングで、南側の大きな掃き出し窓からたっぷりと光が注いでいる。

「掃除がしやすいように、家具をあまり置かずに暮らしたいと思っていました」と奥様。折りたたみできるスノーピークのTake!チェアロングが1脚置かれているだけで、ソファやテーブルなどの大きな家具はなし。

テレビはアンテナケーブルの接続を必要としないPanasonicのフリーレイアウトテレビを採用している。

籠もりスペースの奥行は910mm、幅は約2,200mmあり、ベッドと小上がりの中間くらいの広さがある。

程よい籠もり感を楽しめる居場所であり、体を伸ばして横になれるのも魅力だ。その下には3つの引き出し収納も備えられている。

籠もりスペースの右手はカーテンで目隠しされた1畳分の収納スペース。内部には効率よくものを収納できるように3面に可動棚が造作されており、日々の生活で使う様々なものがこちらに集約されている。

これらの収納のおかげで、キャビネットなどの収納家具なしで不便のない生活が叶えられている。そうして実現したミニマルな空間は、いつでも床の隅々まで簡単に掃除ができる。

掃き出し窓に近い3畳分のスペースを勾配天井にして開放感をつくり出しているのもこのリビングの設計のこだわり。ここだけは天井をマホガニーの羽目板で仕上げて木質感を感じさせるアクセントにしている。

ひと続きの空間ではあるが、ここだけ少し異質な印象があり、夜にここで椅子に腰かけて天井を眺めてボーっとする時間も奥様の楽しみになっているのだそう。

食事はカフェのようなカウンター席で

LDKの南側がリビングで、逆の北側がダイニングキッチン。

キッチンは長手方向に配されており、食事はその前に造作されたカウンターでとる設計だ。ウォールナットとレッドオークを組み合わせたカウンターチェアも相まって居心地のいいカフェのような雰囲気が生まれている。

「ダイニングテーブルを置きたくなくてカウンターを希望したんです。先にカウンターチェアを選んでいたので、その高さに合わせて天板の高さを相談しながら決めていきました」(奥様)。

カウンターを支える部材は斜めにカットすることで荷重をしっかりと床に伝えながらも足元をすっきりと見せるデザイン。

また、奥に設けた高窓からは隣家の木を眺めることができるし、窓を開ければLDKの中を気持ちいい風が通り抜けていく。

設計をした加藤さんは「三方を家に囲まれた40坪の変形地をいかに有効に使えるかを考えてこの家を設計しました。特にリビングは抜け感をつくりたいと思い、以前は玄関だった場所にリビングを配置しています。ここがちょうどお隣の家の庭に面する場所なので、視線が合わないように窓を高い位置にしました。また、直線的な空間は単調になりがちですが、奥様が希望された籠もりスペースを採り入れたり、屋根形状を工夫して小さな吹き抜けを設けたりすることで変化に富んだ空間を実現しました。角が少ない空間は居場所をつくりにくいですが、籠もりスペースやカウンターをつくったことで居心地のいい居場所も生まれています」と説明する。

ご主人は「僕は一番落ち着いて過ごせるカウンターの奥の席が気に入っています」とほほ笑む。

キッチンの後ろには使い勝手がよく考えられた造作カップボードがあり、3枚の引き戸を閉じれば生活感をすっきりと隠すこともできる。

個室と収納スペースが配された2階

2階はスタディーコーナーがあるホールを中心に、ファミリークローク、2つの子ども室、トイレ、主寝室が配されている。ホールはスタディーコーナーと本棚が置かれた家族4人の共有スペースで、プライベートな個室に入る前のバッファーのような空間。

子ども室は各5畳と決して広くはないが、短辺でも2,275mmあるためベッドの置き方の自由度が高く使い勝手がいい。

Ehouse-080
西側の子ども部屋の床はグレーがかった「ダストオーク」という名の挽き板フローリング。(写真は竣工時)
Ehouse-082
東側の子ども室の床はホールと同じ杉の無垢フローリング。(写真は竣工時)

UA値0.25の高断熱仕様で家じゅう暖かい暮らし

E邸はすべての窓にトリプルガラスが使われており、壁は高性能グラスウールとフェノールフォームを組み合わせた付加断熱仕様にしている。断熱性能を示すUA値は0.25で、HEAT20G2グレード。断熱等級は最高等級の7をクリアする高断熱住宅だ。

「冬は家じゅうが暖かくてとても快適でした。建具は開け放して、主にリビングのエアコン1台で家じゅうを暖房していました」と奥様。

「建て替え前の家はとても寒くて、結露した窓が凍ったりしていたんです。今は寝る時にエアコンを止めていますが、室温が15℃を下回ることはありませんし、エアコンを点ければすぐに暖まります。建て替え前は冬に2階に行くと寒いので、ほぼ1階だけで生活していたんですけど、この家に住んでからは家全体を使えるようになりました。夏も冷房の効きがよくて快適に過ごせましたね。2時間以上出掛ける時は冷房を止めていますが、帰ってきて冷房を点けるとすぐに涼しくなります」とご主人はその快適さについて説明する。

最後に、新しい住まいで満足していることを伺った。

「前の家では部屋に飾るインテリア雑貨を買おうとは思わなかったですが、この家に住んでから雑貨を買いに行くのが楽しみになりました。あとは夜家族が寝た後に一人で椅子に座ってお茶を飲んだりリラックスして過ごす時間が気に入っています」と奥様。

ご主人は「とにかく家の中が快適で不満がありません。ゴールデンウィークに一度テラスでバーベキューをしましたが、今度七輪を買って楽しみたいですね」と屋外空間の使い方にも目を向ける。

三方を住宅に囲まれた40坪の敷地。新潟市内の住宅地でよく見られるこの条件下では、建てられる家のボリュームや配置は自ずと決まってくる。

その中で自由度の高い空間をつくることは難しそうに思われるが、E邸のリビングにはカウンターや籠もりスペース、勾配天井など多彩な要素が散りばめられていた。

夏冬はエアコンと熱交換型の第1種換気で整えられた快適な温熱環境で過ごし、春と秋は爽やかな風を室内に採り込む。家の中で触れる床やカウンター、建具に華美な印象はなく素朴で温かみがあふれている。

「心地いい暮らしのスタンダード」。そんな言葉が似合いそうなE邸は、どんな住宅地にもフィットしそうな普遍性も感じさせる。

E邸
新潟市東区
延床面積 99.36㎡(30.00坪)
1F 52.99㎡(16.00坪) 2F 46.37㎡(14.00坪)
竣工年月 2025年8月
設計 株式会社加藤淳設計事務所
施工 株式会社Ag-工務店
耐震等級 3(許容応力度計算)、UA値0.25

(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平)