在宅ワークを成功に導く鍵。それはワークスペースの設計にあり。

在宅ワークを成功に導く鍵。それはワークスペースの設計にあり。

今年に入り世界中に感染が広がった新型コロナウイルスの影響で、私たちの生活に変化が迫られました。

外出の自粛や、学校の休校、飲食店をはじめとした店舗の休業要請、そしてオフィスで働く人には在宅ワークが推奨されるようになりました。

3~5月のうちにZOOMなどのビデオ通話を利用した「オンライン会議」が急速に一般化するなど、職種にもよりますが、通勤をしなくてもオフィス業務が遂行できることが証明された数カ月であったように思います。

しかし、誰もが快適に家で仕事ができるようになったわけではありません。ここに来て、自宅内に集中して仕事ができる環境を整えることの重要性が炙り出されました。

家族が居るリビングやダイニングでは、オンライン会議はもちろん、集中して仕事をすること自体が難しく、特に小さな子どもと同じ空間に居る場合は仕事が全くはかどらないばかりか、ストレスも大きくなり家族関係も悪化しかねません。

コロナ禍の中で「自宅に集中できるワークスペースがあったらいいのになあ…」と思った人は多いのではないでしょうか?

今回、そんなコロナ禍の最中の3月に家が完成し、整ったワークスペースでスムーズに在宅ワークを始められた燕市のK様邸を訪問し、インタビューさせて頂きました。

燕市K様邸
設計 加藤淳一級建築士事務所
施工 株式会社Ag-工務店
(インタビュアー/Daily Lives Niigata 鈴木亮平 )

2階の一角、2畳弱の空間に設えたワークスペース

K様邸のワークスペースは2階の西側の一角にあります。

断面図(加藤淳作成)
断面図(加藤淳作成)
物干しスペースから見るワークスペース(※竣工時撮影)
物干しスペースから見るワークスペース(※竣工時撮影)

空間を効率的に使うために、物干しスペースと一体になっていますが、その奥まった場所ゆえに集中しやすい環境になっています。

一方、デスク前の窓を開けると吹き抜けを介して1階のLDKで過ごす家族と簡単にコミュニケーションを取ることもできます。

集中する時間と、家族と繋がる時間。それを1枚の建具で簡単に切り替えられるのが特徴です。

――ではK様、よろしくお願いします。そもそも家にワークスペースを設けようと思ったのは、どのような理由からでしょうか?

K様:私は燕市出身なんですが、県外にある電機メーカーの半導体部門に勤めていて20年弱新潟を離れて暮らしてきました。ただ、妻も新潟県出身なので家を建てるなら新潟がいいなと思っていたんです。

そこで会社の上司に相談したところ、リモートワークが認められたので、新築する家の中に、仕事ができるしっかりとした書斎を設けることにしました。

――リモートワークでどのように業務を進めて行くかという具体的なイメージはありましたか?

K様:いえ、どれくらいの割合で自宅で仕事をして、どれくらい会社に行くかをあらかじめ決めていたわけではないんです。私も上司も、やりながら模索をしていくようなイメージでしたね。

なので、3月中旬に家が完成し、3月下旬に県外から引っ越してきましたが、住んでいたアパートは引き続き借りたままにしています。行ったり来たりを繰り返すような働き方になると考えていましたので。

――今日は5月15日ですが、引っ越してから1カ月半の間、会社に何度か出勤したんですか?

K様:いえ、新型コロナウイルスの影響が深刻になり、移動も自粛を求められるようになったので一度も出勤していません。会社の他のメンバーも一部の研究職以外はほとんどリモートワークになりました。

私は入社時は開発部門にいて10年程は回路設計の仕事をしていました。その後製品を使ってもらうためのサポート業務を経て、2年程前にマーケティング部門に入ったんですが、今の業務は基本的にネット回線があれば自宅でもできるんです。

――在宅ワークは具体的にどのように行っているんですか?

K様:まず朝9:00に仕事を始めるときに、「これから仕事を始めます」というメールを上司に送るのが始業の合図になっています。私の仕事はセールス部門や開発部門と情報共有して、顧客のニーズに合った製品開発を考えることです。特にオフィスにいないからといって不便さを感じることはないですね。

夕方に業務を終える時は、始業と同様に上司にメールを送って終了となります。

――在宅ワークによって孤独感を感じたりすることはありませんか?

K様:特にないですね。週に2日はチームで10人弱でオンラインミーティングを行っていますし。今朝も上司とオンラインで面談をしていました。むしろ、自宅のワークスペースの方が集中しやすいと感じています。

ちなみにオンラインミーティングは互いの顔を画面に映すのではなく、資料を画面に映して話し合いをするというやり方が多いですね。その場に居るわけではないので気配が感じられないため、発言のタイミングが重なったりという不便さはあります。あとは、それぞれの自宅のネット環境の違いによる不具合も課題です。

――通勤がなくなったことで運動不足になったりはしませんか?

K様:以前は自転車で通勤をしていましたが、たしかに今は平日は1日家を出ない日もあります。なので、こっちに来てからは休みの日にランニングをするようになりましたね。

――自宅で仕事ができるのは便利な反面、ONとOFFの区切りが曖昧になりそうです。そのあたりはどうでしょうか?

K様:仕事でヨーロッパとのやり取りもあるんですが、当然日本と時差があります。そこで、夜9時くらいにメールでやり取りをしておくと、相手がすぐに仕事を進められますし、結果的に私も翌朝スムーズに仕事を進めることができるんです。

以前はその時間にオフィスにいないためにやり取りができず、1日分仕事の進みが遅くなるということがありました。今は自宅でそれが簡単にできるのですごく効率的ですね。

夕食を家族と食べてゆっくり時間を過ごした上で、仕事もスムーズに進めることができます。ONとOFFの区切りが曖昧になって困るというよりも、メリットの方が大きいですね。

ただ、労務管理的にはグレーゾーンなので、この話はオフレコにして頂くかもしれません。

――加藤淳さんに設計してもらい、Ag-工務店さんが造り上げたこだわりのワークスペース。その特徴や使い勝手について教えてください。

K様:まず「山が見えるようにしてほしい」と伝えていたんですが、それで場所を西側にして頂いたんです。ちょうどデスクの右側に小窓が切られていて、そこから弥彦山を望むことができます。

その景色を見られることは仕事の息抜きになっていますね。また、この窓からの光の入り方で時間の感覚もつかみやすくなっています。

書斎の平面イラスト(加藤淳さん作成)
書斎の平面イラスト(加藤淳さん作成)

あとは、椅子に座った時に手が届く位置に棚が配置されているのがいいですね。デスクの正面に建具がありますが、その建具の奥にも棚を設けて頂きました。

ワークスペースと1階のLDKを繋ぐような構成にもして頂きたかったので、デスクの正面に窓をつくってもらっています。

――立ち上がって顔を出せば1階にいる家族との会話もしやすいですね。「お茶持ってきてー」とか言うんですか?

K様:いえ、言わないです(笑)。

――“やらせ”ですいませんが、ちょっとやって頂いてもいいですか?

K様:分かりました。

――なるほど!下からはこう見えるんですね。娘さんがお茶を持ってきてくれたりしますか?

K様:いや、しないですね。

――たびたびすみませんが、今度は娘さんに協力してもらいましょう。

――やらせてしまいすみません。でも、理想の在宅ワークの姿ですね!ところで、今回家が完成した時期にリモートワークが世の中的に一般化したのは絶妙なタイミングでしたね。

K様:そうですね。前住んでいたアパートは2部屋しかなかったので、オンライン会議はもちろん、仕事自体ができる環境ではなかったです。アパートにいたら車の中で仕事をしていたかもしれません。

ちなみに今朝の上司との面談で、「在宅ワークになっても特に効率が落ちていない」という評価を受けました。私自身もむしろ効率的だと思う部分が多いので、今後もこの働き方は続けていけると思います。

今は、在宅ワークをするための通信インフラが十分に整った時代です。しかし、実際に在宅ワークを快適に行い生産効率を上げるには、きちんとしたワークスペースを確保することが欠かせません。

K様邸のワークスペースは、コンパクトなスペースでありながら使い勝手が良く、集中力を高め、気分転換も容易にできるなど、緻密な計算がなされています。

実は、加藤淳さんは数年前から独自の「住宅建築の7原則」を掲げており、その一つに「小さくても書斎を設ける」があります。そのため、加藤さんが手掛ける住宅の多くに書斎やワークスペースが見られます。

加藤淳一級建築士事務所 代表・加藤淳さん
加藤淳一級建築士事務所 代表・加藤淳さん

籠もって集中しやすい小空間に、景色を眺めて息抜きできる小さな窓、使いやすい造作棚が加藤さんがつくる書斎の特徴。そして、その複雑な設計を阿吽の呼吸でAg-工務店が具現化します。

株式会社Ag-工務店 代表・渡部栄次さん
株式会社Ag-工務店 代表・渡部栄次さん

今後、在宅ワークで高いアウトプットをしていきたいと考えている人は、加藤淳一級建築士事務所×株式会社Ag-工務店が手掛けるワークスペースをチェックしてみてはいかがでしょうか?

新発田市 W邸ワークスペース(2019年竣工)
新発田市 W邸ワークスペース(2019年竣工)
新潟市西区 E邸ワークスペース(2019年竣工)
新潟市西区 E邸ワークスペース(2019年竣工)
新潟市東区 O邸ワークスペース(2018年竣工)
新潟市東区 O邸ワークスペース(2018年竣工)

充実したワークスペースが、仕事の充実感や成果はもちろん、引いては自身の年収にも影響を与える可能性があると思います。

これからのワークスペースはただの趣味の空間ではなく、自身への投資として捉える必要があるのかもしれません。

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平