【加藤淳設計事務所×Ag-工務店】シマトネリコの木を眺めながら、愛猫と暮らす2階リビングの家

※本記事は住宅情報WEBマガジン Daily Lives Niigata による取材記事です。

猫と暮らしやすい住まいを求めて家づくりを検討

2023年春に完成し、築3年が経過した新潟市中央区のF邸。

ファサードに張られた杉板は新築時は茶色だったが、3年の間に色が抜け、ずいぶん昔からここに佇んでいたかのような落ち着きを感じさせる。

6月の日差しを受けたシマトネリコの木は2階の窓を目隠しするように枝を広げ、ポーチやベランダに木漏れ日を落としていた。

以前は賃貸マンションで暮らしていたFさん夫婦が家を建てようと思ったのは、猫と暮らしやすい住まいを求めたからだという。

「住んでいたマンションは猫がひなたぼっこをする場所やグッズを置く場所もなく、よく水をこぼしたり不便さを感じていました。毎日のことなので『ここがこうだったらいいのになあ…』と考えることが多く、その問題を解決するには家を建てるしかないと思ったんです」と奥様は話す。

それからインターネットで住宅会社を探し始めたが、なかなかいいなと思う住宅会社に出合えなかったという。やがて住宅情報誌で見つけた加藤淳設計事務所が手掛けた事例の写真に惹かれ、加藤淳設計事務所のWEBサイトにたどり着いた。

「施工事例を見ていて全部の家に住みたいと思うくらい、どの家もいいなと思いました。私は革製品が好きなんですが、加藤さんが設計する家は自然素材がたくさん使われていて、経年変化で味わいが深まっていくのもいいなと思いました。それから、耐震性能や断熱性能、太陽の動きなども考えてプランニングをする姿勢にも惹かれました」(奥様)。

2階のオーバーハングを利用し、ゆとりあるポーチを確保

東南向きの敷地は47坪で、敷地手前には2台分の駐車スペースとコンクリート平板を飛び石のように並べたアプローチがあり、緩やかにカーブしながら正面の玄関へと至る構成だ。

建物と駐車スペースの間には株立ちのシマトネリコを中心に草花も植えられており、杉板の外壁と相まって優しい表情を見せている。

2階部分をオーバーハングさせることでつくり出した奥行1.8mのポーチはゆったりとしており、ご主人のロードバイクを格納するスペースとして活用している。高い断熱性能を持つ木製の玄関ドアは、雨掛かりが少ないため新築時と変わらない美しさを保っていた。

約3畳の玄関はリネンのカーテンで緩やかに仕切られたシューズクローク付き。玄関と廊下の間には愛猫が玄関まで行かないように鍵付きの引き戸が設けられ、その先には杉の床が張られた廊下が真っすぐ奥へと伸びている。

廊下右手は9.75畳の個室。こちらは将来的に6畳と3.75畳の2室に分けられる設計だ。

現在はFさん夫婦と2歳の息子さんの3人の寝室として使っている。壁にはキャットステップを兼ねた可動棚があり、愛猫がこのステップを通って高窓の窓台に上がり外を眺めるのがお気に入りなのだそうだ。

家事をスムーズにする水回りゾーンの工夫

廊下の突き当たりにあるのは洗面室とランドリールーム。

約4.5畳の細長い空間の手前は洗面スペースで、奥はランドリールームになっている。造作の洗面台は集成材でつくった木製キャビネットに実験シンクを組み合わせたもの。水撥ねしやすい場所にはシンプルなサブウェイタイルを張り、さり気ないアクセントにしている。

その上の鏡と扉付きの収納も造作。幅約900mmと比較的コンパクトなつくりだが、機能的かつ造作ならではの温もりを感じさせる一角だ。

「シンクが広く深さもあるので靴を洗うのにも重宝しています。水が飛び散らないのもいいですね」(ご主人)。

奥のランドリールームは2畳の空間で、2本の物干しに室内干しができる。

また、洗面スペースの隣には2.5畳のウォークインクローゼットが備えられているので、乾いた洗濯物をスムーズに収納できるのもこの間取りの特長だ。

「共働きで日中家にいない時間が多いので室内干しスペースは絶対に必要でした。ハンガーに掛けたままクローゼットにしまえるので家事が楽になりましたね」(奥様)。

幅広オークの床に選び抜かれた家具が調和

1階は寝室や水回り、収納スペースといった比較的小さな空間がまとめられていたが、2階へ上がると雰囲気は一変する。勾配天井によってグッと開放感が増し、高窓から注ぐ光がリビング全体を明るく照らしていた。

重厚感がある幅広の床はアンドウッド社が製造販売するヨーロピアンオーク190幅プライウッド。使い込んだオークの樽のような色味は、塗装したシナ合板の壁と調和し落ち着いた雰囲気を醸し出している。

新発田で見学したお宅の床が素敵だったので同じものにして頂きました」(奥様)。

シナ合板の壁を背に置かれているのは岐阜県高山市の家具メーカー・オークヴィレッジのホライズンソファ。

国産ナラ材を使ったソファは幅広の床との相性がいい。幅20cmのアームは飲み物を置ける広さがあるため、テーブルを置かずに使えるという。

また、ダイニングには周囲を歩いて回りやすい円テーブルを。椅子はオークヴィレッジのSwallowチェア、万寿実家具のminoriフィメールチェアを合わせている。

「家具を選ぶために旭川や高山に旅行に行きました。いろいろな椅子やソファに座って選ぶのが楽しかったですね」(ご主人)。

ソファの正面の壁は奥様の手芸スペースや床置きエアコンスペース、TVボードが造作されている。その横には愛猫用のキャットステップもあり、そこからキャットウォークを歩いて回れるように設計されている。

ダイニング横のベランダにつながる窓は少し角度が付けられており、ベランダは奥へ行くほど広くなる台形状にしているのも設計のポイント。

「外でパンを食べたいなと思ってベランダをつくって頂きました。猫が飛び出さないようにネットを張って頂いたんですが、子どもも安全に遊べるのがいいですね。出かける元気はないけど、ちょっと外に出たい時は子どもと一緒にベランダに出て、布団をひいてみんなでゴロゴロして過ごすこともあります。ここでプール遊びもしてみたいですね」(奥様)。

便利なバックヤード動線に、通り抜けできる書斎

ダイニングの奥にあるのはカウンターと収納を設けた対面キッチン。ダイニング側からキッチンの天板が丸見えにならないように、カウンターを少し高めにしている。

キッチンの背面は3枚の引き戸で内部をすっきり目隠しできるパントリー&カップボード。キッチンの奥が暗くならないように高窓を設けるという細やかな配慮も見られる。

さらにキッチンの横にはバックヤード動線があり、こちらにトイレや手洗い、猫のトイレコーナーをレイアウト。

そこを通り過ぎていくと書斎につながり、書斎を通り抜ければ再びリビングへと戻ることができる。

「自分の部屋はなくてもいいけど書斎は欲しいなと思っていて。今は書斎で一人でゆっくりという時間はあまり取れてないですけど、こういう場所があるのはすごくいいことだなと思っています」(ご主人)。

また、リビングに面した3.75畳の部屋は今はリビングと一体にしてキッズスペースとして使っているが、2枚の引き戸を閉じれば個室として使うこともできる。

「子どもが遊んでいるのがキッチンからも見えますし、子どもが成長したらくつろぐためのスペースとして使ってみたいですね」(奥様)。

ボーっと過ごす時間が楽しみになる住まい

住み始めてから3年が経ち、どんなことに満足をしているか伺った。

「すべてに満足していて、3年経った今も毎日いい家だな…って思いながら暮らしています。リビングからシマトネリコの緑が見えるのが好きで、ずっと見ていても飽きません。ボーっとして過ごす時間が気に入っています。

外壁を板張りにしたのは加藤さんからの提案だったんですが、本当に採用して良かったなあと思います。グレーになってシマトネリコの緑が一層映えるようになりました。

それからそれぞれの物を使う場所に収納したいという希望があって、それを叶えて頂いたのも良かったことですね。使いたい時に道具が近くにあって、使い終わったらすぐにしまうことができます。

あとは2階リビングにして頂いたことで日当たりがすごく良くて。今日もそうですけどちょうどいい感じに日差しが入ってきます。午後になると高窓から入った四角い光が壁に当たってすごくきれいなんですよ。さらに猫がそこにいると猫のシルエットが壁に映って、それが毎日見られるのもいいなあと思いながら暮らしています。

以前はあまりインテリアに興味がなかったんですが、家に合ったものを置きたいと思うようになり、カゴや器を選ぶようになりましたし、エアプランツなどの緑も増やし始めているところです。

風の通りも良くて、以前は読書をする時はカフェや図書館に行っていましたが、今は家で読書をしたいと思うようになりました」(奥様)

「床面積が30坪弱で掃除がしやすく、いいサイズだなあと感じています。猫のトイレを置く場所に換気扇を付けて頂いたのでニオイが残らないのもいいですね。夜に高窓から月がきれいに見えますし、窓から万代にある結婚式場の花火が見えるのも気に入っています。それから外観を皆さんに褒めて頂けるのがうれしいですね」(ご主人)。

設計をした加藤さんは「細長い敷地で、どうやって光を採り入れるか、どうやって抜け感や広がり感をつくり出すかを考えて設計をしました。それで南北から光を採り込むのに加えて、暗くなりがちな真ん中に高窓からの光を採り込むようにしています。

それから、奥様からの『ベランダでおいしいパンを食べたい』というご要望や、ご主人の『秘密基地のような書斎』といったご要望にも応えながら、比較的抑えられた床面積で日々の暮らしが楽しくなるように設計をしていきました。

あとは南側のベランダに『溜まり』をつくることで、ちょっと椅子を置いたりもできるようにしています。壁を斜めにしたのはオーバーハングさせ過ぎずベランダを広く取る上で効果的だったと感じています。

施工を行ったAg-工務店さんからは、斜めの壁の納まりや、高窓がある部分の屋根の防水、高窓からの光が入る天井や壁のパテ処理など、設計によって難易度が上がる部分を特に注意して施工をして頂きました」(加藤淳さん)。

47坪の土地に立つ延床面積29坪のF邸。丁寧な素材選びや天井高のコントロール、採光に通風、回遊動線や収納計画など、あらゆるバランスが整えられているのが特徴だ。

そのバランスの上に「居心地の良さ」という曖昧さを含みながらも、情緒に訴えかける価値が備わっている。そして、それこそが設計事務所と一緒に家づくりを行う醍醐味の一つであることをこの家が教えてくれる。

F邸
新潟市中央区
延床面積 97.26㎡(29.36坪)
1F 46.84㎡(14.14坪) 2F 50.42㎡(15.22坪)
竣工年月 2023年3月
設計 株式会社加藤淳設計事務所
施工 株式会社Ag-工務店
耐震等級 3(許容応力度計算)

(写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平